技術情報

交流電流センサ解説1(出力特性図の見方)

〔一般特性〕
交流電流センサ(CTLシリーズ)は使用条件を選択することにより、非常に広い範囲の電流計測に対応することができます。その概念を表現するために、出力電圧特性図は対数グラフを使用しております。

大電流・出力飽和領域

コアの磁束密度は、出力電圧に比例して増加します。このため負荷抵抗が大きいほど、あるいは計測する電流が大きいほど出力電圧も大きくなり、コアが飽和領域に入ると出力直線性が低下します。
〔CTL−汎用シリーズ〕は飽和磁束密度が高い、方向性けい素鋼板を使用することで、大電流領域まで良好な出力直線性を得ることができます。〔図−3〕

微小電流領域

CT二次側で出力電流に対するコアの励磁電流の占める割合が、微小電流領域では大きくなり、出力直線性が低下します。この特性は、コアに使用する磁性材料の透磁率に大きく依存します。
精密計測用の〔CTL−Zシリーズ〕はコア材に透磁率の高いパーマロイを使用することで、1mA以下の領域まで良好な出力直線性を得ることができます。〔図−4〕

最大出力電圧

出力が飽和に近づくほど、出力直線性が低下するとともに、波形の歪が出てきます。原波形に対する歪の度合を歪率と表現します。特性表に表現している最大出力電圧とは、各センサで負荷抵抗を最適化し、歪率3%を判定基準とした時に発生し得る出力電圧の上限を示したもので、測定電流・負荷抵抗などの条件により変化するので充分吟味する必要があります。

出力波形の歪とピーク電圧

〔図−3〕、〔図−4〕は出力電圧を実効値で表現したものですが、電子回路へのインターフェースにおいては、ピーク電圧の把握も重要です。
〔図−5〕に使用条件が異なるときの出力電圧の波形例を記載します。
負荷抵抗(RL)が大きすぎたり、負荷開放の状態では磁気飽和により、実効値(Vrms)は少なくても大きなピーク電圧(Vp-p)が発生します。用途によっては、ピーク電圧クランプ素子、または、直流化して平滑コンデンサを併用する必要があります。波形の再現性にもバラツキがありますから、位相検知/ピーク電流検知には適しません。